ナポレオン・ヒルの成功哲学の虚実
本当にナポレオン・ヒルはアンドリュー・カーネギーから成功哲学の体系化を託されたのでしょうか?いくつか矛盾する証拠が見つかったようです。
米国の情報サイトGizmodoに、「史上最大の自己啓発詐欺師ナポレオン・ヒルの語られざる物語」と題する衝撃的な記事が掲載されました。
ナポレオン・ヒルと言えば、1908年に鉄鋼王アンドリュー・カーネギーをBob Taylor's Magazineの記者として取材し、そこで「成功者500人を訪ね、成功哲学を体系化してほしい」と依頼されたというエピソードが有名です。ところが、著者はこのエピソード自体がでっち上げだと結論付けています。
著者は、アンドリュー・カーネギー、ナポレオン・ヒルの両側から証拠を探そうとしました。カーネギー側については、その伝記を書いたデイヴィッド・ナソー(David Nasaw)を取材しています。
そこで、ナソーは「カーネギーがヒルに会ったことを示す証拠はありません」と語っています。さらには、「ヒルの本(に書いてあること)が本物であるという証拠はありません」とも語っています。
ヒル側についても見てみましょう。記事によれば、「ヒルは何年にもわたって数え切れないほどの詐欺をやらかした。その初期には、売掛で材木を仕入れておきながら、仕入先にびた一文払わず、相場を大幅に下回る値段で現金で材木を売り払った。読者の皆さんもご想像の通り、そんなことは長続きせず、逃亡生活に入った。しかし、これはヒルが長年やらかした多くの詐欺のほんの一部にすぎない。ナポレオン・ヒルは、自分自身そして彼のアイデアを劇的に人生が変わるものとして売り込む再発明を生涯の生業とする男だった。」とのことです。
特に、ヒルが材木詐欺をやらかしたタイミングがポイントです。それが1908年なのです。記事によれば、1908年の下半期までにはヒルが詐欺をやらかしたということが知れ渡っていたとのことで、その証拠に、1908年10月17日付の地元紙Pensacola Journalの記事を引用しています。
それだけでなく、1908年11月1日付の業界紙The Lumbermanの記事も引用しています。アクリー・ヒル材木会社の社長兼ゼネラルマネージャーとされるO.N.ヒルの消息は、州内の関係する債権者や材木業界の間で相当な不安を招いている。ヒルは9月8日以来出社していない。
ヒルは、数が月前に、秘書に工場を見に行ってくると告げたまま、市内から姿を消し、以来音信不通となっている。
記事によれば、アラバマ州ではヒルに捜査令状まで出たのに、ヒルがどうやって捜査当局から逃れられたのかについては不明なのだとか。
ここまでで明らかになったのは、1908年のナポレオン・ヒルは、材木詐欺がばれて、てんやわんやだったということです。その状況で、どうやってBob Taylor's Magazineの記者としてアンドリュー・カーネギーに取材できたのか、謎ですね。
そのほかにも、ナポレオン・ヒルがアンドリュー・カーネギーから成功哲学の体系化を託されたエピソードを世に伝え始めたのは、カーネギーが亡くなった1919年よりも後だったとのことです。
記事によれば、ヒルは、カーネギーだけでなく、ウィルソン大統領やルーズベルト大統領にも会った証拠がないのだとか。
そもそも20世紀初頭の通信手段と言えば、手紙と電話です。ウィルソン大統領やルーズベルト大統領の広報官を務めたのであれば、その任命状ぐらい大事に取っておくはずですし、そのような公的な立場なら、公的文書が国の公文書館に保存されているはずです。
カーネギーの件にしても、カーネギーが500人の成功者に紹介状を書いたなら、そのうち1通ぐらい残っていてもおかしくはないでしょう。本当にカーネギーがヒルに成功哲学の体系化を託したなら、カーネギーとヒルの間で手紙のやり取りはあったはずです。どちらかにそれが残っていてもおかしくないでしょう。少なくとも、当時無名の若者が、経済界のスーパースターだったカーネギーから手紙をもらったら、1通たりとも捨てられないのではないでしょうか。
アチーブメントの青木さんは、彼の人生を変えた本として、聖書とナポレオン・ヒルの「成功哲学」を挙げています。ナポレオン・ヒルの本を読んだことがある人はもちろん、アチーブメントや自己啓発についても調べている人には、Google翻訳を使ってでも、このGizmodoの記事をお読みになることをお薦めします。
追伸1
アクリー・ヒル材木会社の登記簿謄本は、今でもアラバマ州政府のウェブサイトから購入できるみたいです。O.N.ヒルが本当にナポレオン・ヒルの本名Oliver Napoleon Hillなのか確認できるかもしれません。
追伸2
Bob Taylor's Magazineは、季刊誌でした。つまり、自分が書いた記事が載るタイミングはとても少ないのです。本当にBob Taylor's Magazineの記者だったなら、やはり自分が書いた記事が載っている号は捨てずに取っておくのではないでしょうか。
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